気が付くと、駐車場に停まっていた車は全て入れ替わっていた。空を眺めると雲も変わっていた。空の色も変わっていた。時計の針も刻々と時を刻んでいた。止まっていたのは‥私だけ‥


私だって前に進みたい。進まなきゃって強く思っている。でも、その一歩が中々踏み出せずにいた。

立ち止まっていたらいけない!!そんな事分かっている。でも、誰かに背中を押してもらわないと自力では立ち上がれなかった。

大切な人を失うと‥人ってこんなに無力なんだと肌で感じた。


私はコンビニから少し離れ、近くのベンチに座った。背後で高校生の甲高い声が耳に入ってきたけど、一度も振り向くことはなかった。

声がだんだんと遠ざかり、私だけ隔離されたような冷たい空気が流れていた。


手が冷えてきたので、羽織っていたコートのポケットに手を入れると携帯があった。ゆっくりと携帯を取り出し画面を見た。今の私の心の中と同じで、画面は真っ黒だった。

携帯を少し遠ざけて自分の顔を見た。涙は止まったものの、化粧が落ちていて酷い顔だった。左手の中指で、目の下についたマスカラを擦って落としていると、携帯の画面に男の人が映し出された。

男の人は少しずつ、少しずつ大きく映し出され、画面からはみ出したとき、私の体は男の人の温もりに包まれた。男の人の胸に引き寄せられた体は、小刻みに震えていた。