「あのさ、光ちゃん。多分気づいてると思うけど、俺、光ちゃんの」三浦先輩の話を聞くのが嫌だった私は下を向いていた。
「いって」急に三浦先輩が声を出す。びっくりした私は上を向くと私と同じ色のスリッパを履く男の子が私達の隣を通り過ぎようとしていた。きっと三浦先輩の体に当たったのだろう。
その男の子は何も言わず横を通り過ぎようとした。
「おい、」三浦先輩が男の子の肩を掴む。男の子は立ち止まって三浦先輩に体を向けた。
「俺におもいっきり当たったんだけど」その男の子は振り返り三浦先輩に顔色一つ変えず言った。
「こんな道のど真ん中にいるお前が悪い。」
「なんだとこらっ」先輩は男の子の胸ぐらをつかんだ。
「先輩っ」私は慌てて間に入った。
「人の気持ちも少し考えれば」その男の子は私の顔を一瞬見て先輩の腕を振り払い颯爽と過ぎ去っていった。
これが中谷聖矢(なかたにせいや)との出会いだった。
先輩の視線を見た。
「なんだよ、あいつ」三浦先輩はイラついた思いと一緒に私に思いを伝えてきた。
「まあ、俺は光ちゃんが好きってこと」どこかなげやりでムカついた。私はでもムカつく思いを隠し言った。
「すみません、今はバスケのことで頭がいっぱいだから付き合うとかそういうのはできません」三浦先輩に断り、私は頭を下げて教室へ戻って行った。


