放送が流れてくる。選手紹介だ。
「1レーン………」
聖矢の順番が回ってくる。
「5レーン千葉 咲良が丘高校3年 中谷聖矢くん」アナウンスが流れると聖矢は大きく両手をあげてスタンドのみんなに手を軽く振った。
スタンドは大きな歓声で包まれている。
聖矢の顔は自信に満ち溢れている。
聖矢は優勝が確実だとかきっとそんなことを思ってるんじゃない。
きっと、ただ今の自分の力を全部出せるならそれでいい。そう思っている。
だからこそあんなに堂々としているのだと思う。
いけるなら優勝……その上をいけたなら高校記録。
私もただそれを祈ろう。
聖矢がすべての力を出しきることを願おう。
『位置について』
審判の声がトラックに響く。みなが足を合わせる。それに合わせて私の緊張も高まっていく。
いける、いける…。大丈夫だよ。


