「ってか、送ってく」
「そんなのいいよいいよ」私は精一杯に断る。
「嫌?」
嫌なんかじゃないんだ。さっきから胸の鼓動が止まらなくて怖いんだ。
こんな思い初めてだから。
「嫌じゃないけど…」
「嫌じゃないけど?」
「すっごく緊張してるの」ふっと笑って男の子は私の前に立った。
すると、「大丈夫。俺も緊張してる」と、頭を撫でられた。
「さあ、行こう」
「う、うん」私はドキドキしながら自転車に股がった。
「ってか名前何だっけ?」そうだ。さっきから普通に話して、送ってもらっちゃってるけど私、この人の名前知らないんだ。
「私は、藍川光。あなたは?」
「俺は、中谷聖矢。光っていい名前だな」あなたの瞳に見つめられるとどうすればいいか分からなくなる。
「ありがとう」
「バスケ部だよな?」
「うん。どうして知ってるの?」
「よく、体育館の上のトレーニング機でトレーニングしてるから、時々見る」
「そうなんだ。中谷くんは?何か部活入ってるの?」
「俺は陸上部だよ」
「へえー陸上部っぽい顔してるもんね」
「ぷっ。どんな顔だよ」と、突っ込まれる。


