「いい加減川村さんに親父さん譲ってやれよ」



河川敷で松井と葵は寝転がっていた。



「だーめ。いくら父さんと百合絵さんが婚約したからって、来年の三月の挙式までは、あたしだけの父さんなの」



葵はちぎった草を松井の顔にかけた。



「ちぇーっ、俺がいるじゃないか。それより川村さんて百合絵って言うの?なんか合わないなぁ」



「あのひと眼鏡とかっちりした髪型や服装でわかりにくいけど、すごく美人だよ。しょっちゅう会っていて気づかなかった?」



「そっかぁ、そう言われるとそうだな。惜しいことしたな」



松井は指を鳴らしてそう言った。



「なんだってぇー」



葵は松井の上に馬乗りになって、彼を思い切りたたいた。