教室のドアの外では、夏希たち三人が耳をそばだてていた。 「ふーん。葵を置いて行こう言うのんは、こういうことやったんや」 「まぁね。葵は結構この手のことにはオクテだから、きちんとセッティングしてあげないとねっ」 「さすが夏希。唯一の経験者だけあるね」 「あーあ、音楽留学している拓実に逢いたくなっちゃった」 「なぁ、ピアニストってやっぱ、指使いはうまいんか?」 春海が指を動かしながら言った。 葵には、廊下できゃーきゃー叫ぶ声も聞こえなかった。