真っ暗な自室の隅で膝を抱えて座り込む。




なぜだか、どうしようもなく怖くなって。




疑う事なんて現代でだって何度といわずやってきた。

なのに、この時代じゃ同じ“疑う”でもまるで異質。


命まで左右する言葉だなんて、思ってもみなかった。




現代が、どれだけ平和だったのか思い知る。

どれだけ、恵まれた場所にいたのか、痛いほど感じる。



無くなってから気づく、なんて言うけど、本当にその通りだわ。





「…悠希?」





不意に、襖の向こうに誰かが立っていた。

月明かりをバックに、そのシルエットが黒く浮かぶ。



「…入るよ?」




遠慮がちにそう言って襖が開いた先には、藤堂さんがいた。




「うわ!真っ暗じゃねぇか。そんなとこで何してんだ?」



「ちょっと…考え事を…」



「考え事?てゆうか、どこ行ってたんだよ!」


ちょっと怒ったように言う藤堂さんに思わずビクリとする。



「ごめんなさい…あの…お梅さんの所に…」



「え!?芹沢のほうに行ってたの!?」



「はい…いけませんでしたか…?」



「いや、いけなくないけど…無断で出かけんなよ…そんなんだから…」



藤堂さんはそこまで言って口を閉ざした。



「…そんなんだから…なんですか?」



続きを促すと、焦ったように笑った。





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