それにしても…
江戸時代、かぁ…
随分な時代に飛ばされたもんだ…
「…悠希、ついたよ。」
「え?」
近藤さんに声をかけられて顔をあげると、真っ先に達筆な文字が目に入った。
『壬生浪士組』
そう書かれた板を見つめる。
壬生浪士組?
そんな言葉、初めて知った。
「あけてくれ、俺だ。」
近藤さんがドンドンドンと戸を叩く。
暫くしてギィィと古びた音をたてて扉が開いた。
「お帰りなさい!近藤局長!」
「お帰りなさい!!」
わらわらと男の人が集まってくる。
みんな浅黄色の羽織りを着ていた。
鮮やかなその色が目に焼き付く。
「あぁ、ただいま。」
にこにこしながら答える近藤さんに、皆が頬を綻ばせた。
慕われてるんだなぁ、と一目で分かった。
でも明らかに近藤さんの子供ではないわね。
三十を過ぎた人も見受けられるし…
「あの…局長、そちらは…?」
遠慮がちに上がった声に、それが私をさすのだと気付いてドキリとした。
「あぁ、この子は酒井悠希と言って、私たちの新しい仲間になる子だ。後で皆にも紹介するが、先にトシと話がしたいから、少し待っていてくれ。」
近藤さんの言葉に皆がざわついた。
「まだ子供じゃねぇか…」
「ほっせぇ体…」
「女みてぇな顔だな…」
ざわつきの中から聞こえる言葉に、無性にむかついた。
女みてぇな顔って、
私、女ですけど!?!?
苛立ちが顔に出てたのか、近藤さんが苦笑いしながら言った。
「許してやってほしい。口は悪いが根はいい奴らなんだ。」
私はただ、曖昧に笑った。
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