あまりに、平和な世界。





色鮮やかな美しい着物に囲まれて、一日をのんびりと過ごす。

あの場所で、刀を握っていた時とは正反対な生活。



この時代は、いつも命のやり取りが隣にあるような気がしていたけれど、

こんなに現代よりも柔らかい平和な時間があることを初めて知った。



お菊さんが着付けてくれた薄紅色の着物を身につける。



着物がこんなに重たいなんて、知らなかった。



刀の重みとは全く違うそれは、美しい色を撒き散らしていた。



平和すぎる、なんてぼんやり考えながら店番をしていると、扉が開いた。



そこには少し疲れたような顔をした麗くんがいた。


その姿を見て、にっこり笑う。



「麗くん、お帰りなさい。商談はどうだった?」


「…うまくいったよ。うちの着物を買って貰えるらしい。」




何故か不機嫌な顔をしながら麗くんはどさりと腰を下ろした。






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