小さな小路をただ歩く。
近藤さんは私の歩調に合わせてゆっくりと歩いてくれた。
お互い、何も話さない。
…多分、近藤さんは私に気を遣ってくれてるんだと思う。
今更だけど、優しい人。
見ず知らずの私を、見捨てないで最後まで送り届けようとしてくれている。
優しい、人。
何か、御礼を言わなくちゃ。
そう思って近藤さんを見上げると、近藤さんも私を見ていた。
目が合って、近藤さんは少し笑って、指差した。
「見えたぞ、京の街だ。」
その先に広がる景色に、私は言葉を失った。
「綺麗…………」
五重塔やら何やらが、美しい色合いで建ち並ぶ。
綺麗な街。
近代的な建物が一つも見当たらない。
確か、京都は観光地だから町並みが近代的にならないように気を遣っていると学校で習った気がする。
だから、町中にある自販機や電柱も町並みに溶け込むような工夫が……って、あれ?
よく見たら、あるはずの物がない。
いくら…いくら、工夫していたって、一本もないなんて有り得ないのに。
電線が、一本もない。
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