「あら、お客さん?」
私を見てにっこりしたその人を見て、思わず見惚れる。
麗と呼ばれたそいつが綺麗なのは間違いなく遺伝だと思う。
立花、菊さん。
お梅さんの、友人。
「あ、の………私…酒井悠希と申します。」
「酒井、悠希……………」
呟いて、数秒後、驚いたようにその瞳が私を見つめた。
「そう…貴女が…悠希ちゃんね…」
噛み締めるように私の名を紡ぐ。
何故か、泣きそうになる。
気がつけば、視界が真っ暗になり、誰かの体温を感じた。
それが、お菊さんの体温だということにはすぐ気付いた。
ふわりと広がったお香の匂いが漂う。
「…お梅ちゃんから話は聞いてたわ。」
耳元でそっと囁かれた声は、微かに震えていた。
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