雲がゆっくりと流れ、風の音すら優しく聞こえた。
草木がふわりと揺らされて、太陽の光を散らす。
柔らかく、温かい世界。
「…勿忘草って知ってる?春先に咲く青い小さな花。」
「はい。可愛らしい花ですよね。」
唐突に花の話を始めたお梅さんを不思議に思いながらも、私はその小さな青い花を思い出した。
「あの花の花言葉はな、“私を忘れないで”や。」
「私を、忘れないで…」
「そぅ。悲しい花やろ?死んでもなお、誰かの中に生きようとする。」
死んでもなお、
例えば誰の心に、記憶に、
残っていようと。
生きていようと。
あの青は、忘れないでと叫ぶ、涙の色?
「…もしも私が死ぬ時、悠希が傍におったら…」
やめてよ。そんな“もしも”の話は…
「その時は、私なんかさっさと忘れて、前に進んでな?」
優しげに笑ったお梅さんの横顔に、なぜだか胸が痛くなった。
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