「あいつ走るの速くて・・・」

シバちゃんはそう付け足した。


"フミエ"・・・

"あいつ"・・・

シバちゃんの言葉とともに、綺麗なフォームで駆け去るフミエちゃんの姿が頭に浮かんだ。


「見なかったけど、いないの?」

僕が答えると、

シバちゃんは何か言葉を飲み込んだ。

僕には、

"おまえのせいだからな"

という心の声が聞こえた。

代わりに
「知らないならいい」
と言ってシバちゃんは走り去った。