―……



「ったく、ここの家は一体何部屋あるんだよ」




俺は永井 葵。

今日からこの有島家で働く事になった。



当主の有島様ご夫妻に挨拶したまではよかったものの………




「だ――っ!会場ってのはどこにあるんだ!」




そう…。


この迷路のような屋敷の中、俺は見事に迷ってしまったのだ。



同じような部屋の前を何度も通り過ぎている…。



一向に会場へ続く通路にさえたどり着けないまま…




「お嬢様にも挨拶しなきゃいけないってのに…」





…?



あれ?と思った。




今まで通った所の部屋の扉は全て閉まっていたのに、



今、目の前にある扉は少しだけ開いているのだ。




…まるで誰かを引き寄せるかのように。




いつのまにか俺は扉の前に来ていた。