私の前に来るなり葵は私にキスをした。
触れるだけのごく普通のキス。
でも、あの私の質問に答えたときのキスとは違って……
「な…なんで」
「言ったろ?"じゃあもう一回"って。」
そうだ。あの部屋で私が泣き出した時。
「ちゃんと"気持ち"こもってるぞ」
「…へ?……っ」
途端に顔が真っ赤になる。
自分自身の言った言葉を思い出したからだ。
「"気持ちのこもってないキスなんかしないでよ"」
「俺は約束は絶対守る男だからな。」
「…葵」
だんだん耳元に顔を近付けてくる。
あ…顔がもっと赤くなっちゃう…!
「おやすみ。…優海」
彼は一言そう言うと部屋を出ていった。
…今、優海って言った?