「ここからでもちゃんと

お声は聞こえますし、

話し相手は務められますよ?」

ソルジェニーが見上げると、

その美貌の騎士は、

それは優しげに

微笑んでいて、

ソルジェニーを有頂天にした。

「・・・あの・・・私は全然

軍の仕組みが、

解らないんですが、

どうして貴方は宮仕えを

なさらず近衛に

いらっしゃるのです?」

聞かれてファントレイユは、

暫く黙った。

が、ゆっくり口を開くと

つぶやいた。

「・・・そうですね。

宮仕えが出来る

立場には居ましたが・・・」

そして、自分を伺う

ソルジェニーを見やると、

微笑みを浮かべて言った。

「・・・そんなに不思議ですか?

私が近衛に居る事が」

「だって、ここの誰よりも

優雅でいらっしゃるから・・・。

宮廷作法の教育係が、

貴方と比べたりしたら不作法に、

見えてしまう程です」

ファントレイユは苦笑して言った。

「それは・・・。

作法の教育係に、

恨まれそうですね」

「・・・ギデオンのように、

戦うのが大好きだからですか?」

とてもそんな風には

見えなかったが、

取りあえずそう尋ねてみた。

「まさか・・・!そんな風に、

見えますか?

私は血を見るのも、

殴り合いも大嫌いです」

やっぱり・・・。と

ソルジェニーは思った。

でもそれならますます、

不思議だった。

「それでも、近衛が

良かったのですか?」

ファントレイユは肩を、すくめた。

「・・・もし私が近衛で隊長を

していなかったら、

多分もっとたくさんの男に、

やさ男となめられて、

決闘を、

ふっかけられていたで

しょうしね」

ソルジェニーは彼に

それは不似合いな、

“決闘"という言葉につい、

驚いて訊ねた。