「お待たせ」
「ううん、私も今来たところ」
待ち合わせ場所に着くと
すでに麻衣がいて、僕を見つけると小走りで駆け寄って来る。
「じゃあ、行こっか」
自然と麻衣の腕が僕の腕と絡まる。
そんな当たり前がもうなくなるかと思うと…
そこまで考えて、あわてて頭を振る。
楽しい時間をわざわざネガティブにすることはない。
「優くんとこうしてごはん食べるの久々だね」
記念日や誕生日など特別な日に利用する2人ともお気に入りのレストラン。
少し値ははるが、そんなことは関係ない。
「ごめんな。最近、忙しくて」
研修のための準備や引き継ぎで最近はてんてこ舞いだ。
「仕事はどう?もう慣れた?」
「うん。もう入社して1年だからね。
まだうまくいかないこともあるけど、でもだいぶ慣れたよ」
麻衣は僕の4コ下で、去年うちの会社に入社してきた。
麻衣のの入社式で僕たちは出会い、恋に落ちた。
「1年か…早いな」
無意識にそう呟いていた。
「ん?急にどうしたの?」
麻衣が不思議そうに首を傾げている。
「いや、なんでもないよ。
ところでさ…」
僕は話を変えた。
まだ、本題に入るのには早すぎる。
できれば、デザートが運ばれたあとがいい。
…なんて、考えていたのに
気づくとおいしそうに飾られていたデザートの皿は空になっていた。
コーヒーだけがテーブルの上に残っている。
こんなところを達弥に見られでもしたら、
「先輩…何やってんすか」
と、怒られるに違いない。


