「そもそも、先輩…ウソついてるじゃないですか。」



「ウソなんて…」



「やめてくださいよ。

悩んでるフリしてるだけだって俺が気づいてないとでも思ってるんですか?」


何も言い返せない。



「本当はこんなこと言いたくないんですけど、


でも、先輩が俺を騙そうとするんで言わせてください。」


達弥は拗ねたような顔で僕を見る。



「先輩の中で答えは出てる。


でも、それを否定されたくなくて俺にウソをついている。」


最後が疑問形じゃないところを考えると

相当な自信があるらしい。



「別にいいんですよ?


どうせ俺、後輩ですし、

6コも年下ですし、

最後まで騙されていようと思いましたが、

もう、無理です…」


「…ごめんな」


僕には謝ることしかできなかった。

なぜなら全て、コイツの言う通りだから。


僕は僕自身で出した答えに、自信がない。


そして、その答えを否定されようものなら

多分、麻衣に何も言わずに飛び立つ、

なんて1番最低なことをしでかす自信がある。


だから、悩んでるフリをした。



「先輩。今はもう、何も言わなくていいです。

否定とかしたくないですし。


でも、どうなったかくらいは教えてください。

そうじゃないと俺、夜寝れないです」


「ん。分かった。約束する。」



そう言うと嬉しそうに笑う達弥。

こういうところを見ると

コイツもちゃんと、年下なんだな、と感じる。



それから3時間。

他愛もない話をして達弥とわかれた。


そして、家に帰る電車の中で

決意をかためた。