「えー…っとじゃあ次は在校生代表で、吉川、よろしく」
「え!?なんで私なんですか!?
こういうときは次期部長が…!!」
「口下手だからパスさせてください、っていう申告があってな」
しんみりしたムードの部室に起った少しの笑い。
あがいたところで私が喋ることを回避するのは不可能だろうと悟った私ははあ、と大きく息を吐きだした。
「…ご卒業、おめでとうございます」
正直、人前で話すのは苦手だ。
それに目の前には『憧れている』新島先輩がいる。
ドキドキしないワケがなかった。
「先輩方と共に過ごした時間はとても楽しく、卒業されてしまうのがすごく、寂しいです」
最後の制服姿をこの目に焼き付けるために、
俯くことはしなかった。
「不甲斐ない後輩で、先輩方にはたくさん迷惑をかけたと思います。
それでも日々、いろんなことを教えていただき感謝しています」
恥ずかしくて、照れくさくて、
寂しくて、悲しくて。
顔はものすごく熱かったのに手がものすごく冷たかった。
「先輩方を泣かすようないいことは何も言えませんが、
またここに遊びに来てください。
そして指導していただければ嬉しいです。
最後になりますが卒業されても頑張ってください」
新島先輩と目があって。
優しく笑う先輩。
やめてほしかった。
一生懸命堪えていた涙が溢れそうで。
深呼吸してそれを無理矢理押し込めた。


