サヨナラのカタチ






「そんなシミジミと呟かないでよ!

先輩がいなくなって寂しい気持ちは分かるけど、私たちがいるでしょーが!」


卒業式だね、と呟いた千絵の肩を抱き寄せて

そんなふざけたことを言ってみる。



「もうっ!やめてよ!」


「泣くな泣くな!笑顔だよ?千絵!」


「泣いてないもん!」


瑠実と2人で千絵をからかって。

卒業式のしんみりとした空気をなんとか拭い去ろうとしていた。



「…おはようございます…」


そして部室に明らかに元気のない様子で入って来たのは海ちゃんだ。



「海ちゃん!大丈夫か!

もうすでに涙が溜まってるよ!?」


「はいぃぃ…昨日の夜、全然寝れませんでした…」


そんな言葉に千絵は複雑な顔をしていた。


なんと言っても海ちゃんは千絵が新島先輩を好きなことをまだ知らない。

言えるはずがなかった。

だって『言ったもん勝ち』だもん。

私が今さら千絵や海ちゃんに言えないと同様、

千絵も海ちゃんに言えずにいた。



「まあまあ。一生会えなくなるワケじゃないんだしね」


明るい声でそう言った私は、

2人に向けて言ったようにみせた言葉だったが、

自分自身に言い聞かせる一言だった。