浩輔のこの表情にいつだって甘くなって。
最初に私が浩輔の分までお金を払うようになったのも、この顔をされたときから。
レジで
『ごめん…お金なかった』
と、子犬のような顔をされたとき。
『仕方ないなあ』
そう言いながらも頼られたことがちょっと嬉しくて。
私は躊躇いもなく、お金を払った。
それから幾度となく、浩輔はお金がないと言い
そのたびに私の財布のヒモは緩まった。
そのうちに浩輔はお金がないとも言わなくなって。
私は自ら進んでお金を払うようになった。
「浩輔。
私ウソついた」
「え?」
「別れよう、って言ったの浩輔のためだったんだけど。
本当はそうじゃなかったの」
「意味わかんねーんだけど。」
「あのね、浩輔のために別れたほうがいい、最初はそう思ってたんだけど。
でも、違うの。
このまま浩輔と付き合ってると、
私がきっとダメになっちゃう。」
「はあ?余計意味わかんねーし」
「今のまま、私と浩輔が付き合ってても、お互いになんのメリットもないの」
「なんだよ、メリットって!
人が付き合うのにそんなもん必要なのかよ!」
浩輔の言うことは一理ある。
メリットなんていらない。
でも、ダメだと思う。
だって私たちが付き合ってることで
メリットはないけど、
デメリットはこれでもか、ってくらいにあるんだから。


