「そんな言葉、言わないでよ…っ!!
できなくても、忘れる、って私…決めたんだから」
震える声で奏は言う。
「本当はずっと、分かってたよ。
先生が私のこと、生徒としか見てないこと。
だから、このキモチ、言わないでおこう、ってずっと思ってた。
だけどさ、今日で先生とサヨナラでしょ?
私、好きだって言わないと先生のこと、忘れられないって思った。
だから、言うことにしたんだ」
さっきとは打って変わって落ち着いた口調。
だけど、涙は相変わらず流れて、声も震えていた。
「迷惑だった?」
「いや、全然」
「そっか。なら良かった」
泣いているのに笑顔を見せる奏。
「告白…して良かった。
思わせぶりなこと、言われたけど。
だけど、良かった」
奏は涙を拭う。
「センセ、ありがとう。
それから…サヨナラ」
そう言って俺に背中を向けて歩いて行く奏。
「奏ー!ありがとなー!!」
細いその背中に叫んでいた。
奏は振り向いてはくれなかったけど。
だけど、俺の感謝の気持ち、きっと伝わった。
俺なんかのこと、好きでいてくれてありがとう。
絶対、いい男見つけて、幸せになるんだぞ、奏。
『先生』の俺は『生徒』の奏のこと、ずっと、応援してるからな。
―第4話 完―


