「奏、ごめん。

お前の気持ちに…応えてやれなくて、ごめん。」


「………好きっ!」


「…え?」


突然、叫ばれて思わず聞き返す。

すると奏はゴシゴシとセーラ服の袖で涙を拭う。



「好きっ!

授業中の眠そうな顔も、
ウザイ絡み方も、
チョーク持つ手も、
イスに座るとすぐに足組むくせも、
思わせぶりなこと言うところも、

全部、全部、好きっ!!」


「かなで…」


俺、お前にそんなに愛されてたんだな。



「だから…っ!」


「え?」


「だから、今日で諦める。

もう、先生のこと、想うのやめる」


奏はまた、俯いた。

すると、止まっていた涙がまた溢れ出したのか、雫が芝生の上に落ちて行く。



「…だけど多分、できないと思う」


「そっか。

なら、ずっと俺のこと、想ってくれていいよ」


俺にだって経験はある。

好きで好きでたまらなくて。


だけど、その人のことを諦めなきゃいけなくて。

けど、そんなことはできなくて。


だから、思う存分、俺のこと、好きでいればいいよ、奏。



「…バカっ!!!」