「ねえ、翔馬ってば」 少し声を大きくするとやっと新聞から顔を上げる。 「それ、おいしい?」 「…え?」 私の質問によほど驚いたのか、翔馬は私をじーっと見ている。 「で、おいしい?」 「え、あ。うん。 おいしいよ。」 そう、とだけ返事を返す。 よし、もう思い残すことはない。 最後にもう1度聞きたかったのだ。 翔馬の口から『おいしいよ』と。 「あのさ、私…ここ、出ていくね」 そう言ったと同時に 翔馬の口に運ばれるはずだったハンバーグの欠片がお皿の上に落ちた。