「え…?」
麻衣の目に涙が浮かぶ。
「僕にはこれを、受け取る資格がない。」
「どうして…?」
「麻衣。僕はキミにずっと、隠していたことがある。」
深呼吸を繰り返す。
「…海外研修のこと?」
「え?」
僕の口より先にその言葉が出てくるとは思わなくて、
思考が停止する。
「優くん、自分の有名度知らなさすぎだよ。
社長の息子が3年海外研修に行く、
なんてことは社員全員が知ってることだよ。」
僕は、バカだった。
麻衣に言われるまでそのことに気がつかないなんて。
確かに、まったく違う部署の同期に
「研修、頑張れよ」
と、声をかけられたことがあったのに。
「ごめん…ずっと隠してて。」
「ホントだよ。
もう週末には行っちゃうはずなのに、なんにもわたしに話してくれないから、ソワソワしてたんだからね。」
麻衣が無理に笑顔を作っている姿が痛々しくて。
そして、そんなことをさせてる僕自身に腹が立った。
多分、いや…絶対に麻衣は分かってる。
これから僕が何を告げようとしているのか。
「別れよう、麻衣」


