はっとして警戒の眼差しを投げかけると、戸口に真っ白い大きな毛玉のような物体があった。それはふわふわと可愛いらしいヒヨコを思わせるが、ずっと巨大だ。よく見ればヒヨコの頭のあたりには、まだ幼い少年の顔があるうえに羽からは小さな手がのぞいている。

(ヒヨコの着ぐるみ少年?)

 そんな緊張感のないことを思いながら、毒気を抜かれてぽかんと見守るメディアに、巨大なヒヨコもどきの少年はなんのためらいもなく、ひょこひょこと近づいてきた。

 そして、印象的な紅い目を丸くすると、すっとんきょうな声を上げた。

「あっー、だめじゃないですか。血だらけじゃないですか!」

 小さな手が、メディアの手首をつかむ。たしかに、むきになっての悪戦苦闘の末、やぶけた皮膚から血がにじんでいるし、爪が割れた指先は血だらけだ。

「すぐに手当しますから、これ以上さわってはだめですよ。薬とってきますから」

 ヒヨコ少年は、今にも部屋を飛び出していってしまいそうな素振りを見せた。

「ちょっと待ちなさいよ」

 メディアは声を荒げて問う。

「あんた、いったい、だれよ?」