ぼう然と手のなかに残った純白の羽毛をみつめるラムルダに、ロランツは話しかける。

「それは、魔法の産物ですね? メディアの残したメッセージですか」

 ラムルダはゆっくりと首を振った。

「これは、たぶん、しかし、そんなことが……」

 はっきりしない院長の態度に業を煮やしてつめよったのは、シャリアだった。

「何なの? はっきりしてよ」

 ラムルダはようやく立ち上がった。
 もともと、そんなによくない顔色がさらに悪くなっていたが、紫の瞳には強い色が浮かんでいた。

「これは、たぶん、『黒魔法の世』に創られた生き物の羽根です。夜と昼とでは、姿を変えるものも創られたと伝えられています。少なくとも今の私たちには、こんなものは創れない」

 今は『果ての森』と呼ばれる北の森に、人界と、それとは異質な空間である魔界をつなぐ穴が出現したときに、強大な力が魔法使いにもたらされた。
 その力を用いて、魔法使いが人の世を支配した時代があった。

 それが『黒魔法の世』と言われる。
 当時、魔法使いたちは、その強大な魔力によって独自の生き物を創造した。互いの領地を賭けてのゲームをするためである。

 必要とあれば、生きた人間ですら改造した。そうして、創り出した生き物、『創られしもの』同士を戦わせ、買った方が負けた方の領地を取った。

「ドラゴン、そして吸魔樹も本来あの時代に創られた生き物です」

「それは……」

 ロランツは息を飲む。