草原の姫君、そう呼ばれてシャリアは、彼に好感と興味を覚えた。
 彼女はウィルランドの王女ではあるが、いずれ草原を継ぐものでもある。

 けれど、街のものは草原の一族を野蛮と見なし、彼女がまた草原の自由な民であることを、認めようとしないものが多い。

 兄よりも、少し年上くらいだろうか。
 きれいな黒い巻き毛に、蒼白くやせた顔立ち。
 典型的な街の住民に見えるが、どこか暖炉の火を思わせた。

 秀でた額を飾るサークレットには、見事な紫水晶が輝いているが、彼自身の紫の瞳にも、それに負けないだけの強い輝きがあった。

「はじめまして、ラムルダ様。メディアお姉様の居場所をご存じですか?」

「残念ながら」

 彼は再び首を横に振ると、王子の方に向き直った。

「とにかくその髪というのを、見せていただけますか?」

「こちらへ」

 ロランツに先導されて、ラムルダはバルコニーに向かう。
 シャリアも女官長の手を振りきると、その後を追った。