部屋に通されたラムルダは、王子の顔を見るなり息を飲んだ。

 いつもとずいぶん雰囲気が違って見えた。

 まとめて結わえているか、編んでいる長い青銀の髪が、今日に限ってそのまま肩に胸にさみだれかかっているせいではない。もともと、どこか冷ややかで超然とした雰囲気を持つ人だが、今朝は何だかさらに近寄りがたい雰囲気を発していた。

 抑揚もなく感情のこもらない声が言う。

「朝早くに申し訳ない。メディアはそちらではなかったのですか」

 ラムルダは首を横に振った。

「あの子は、この頃はこちらにはよりつきもしてくれませんよ」

 そこで、彼はベッドの上で、女官長に抱かれるようにすわっている、見知らぬ少女に気がついた。王子にとてもよく似て、人目を引く美しい娘だ。が、彼にはない、人なつこそうな愛らしい雰囲気がある。

「妹のシャリアです」

 ラムルダの視線に気づいたか、ロランツがそう紹介する。

「シャリア、魔法院の院長ラムルダ殿だ。メディアにとっては魔法の師で育ての親も同然の方だ」

「はじめまして、草原の姫君」

 と、言葉短くラムルダが挨拶する。