「なんなら返品してもいいわよ。あの子の方が似合うだろうし」

「草原の民に、宝石は不要だ」

 何を思うのか、そのままどこか遠くを見るような眼差しになるロランツに、メディアはふと不安になった。

 何だかどこかに行ってしまいそうで。
 手の届かないところに。
 思わず手を伸ばしていた。

 ふいに服を引っ張られたのに気づいて、ロランツは驚きの表情を見せた。
 メディアの方から、彼に手を伸ばしてくるなど、滅多にないことである。

「メディア?」

 はっとしてメディアは手を引っ込めようとするが、すぐにロランツの大きな手に捕らわれる。メディアの不安を読みとったのか、問いかけてくる。

「どうした?」

「な、なんでもない」

 あわてながらメディアはさらに手を引こうとする。王子は仕方なく彼女の手を解放した。

「今度からは、貴金属、宝石類以外の装飾品で君に似合いそうなのを見つくろうことにするよ」