「セルウさんが?」

 しかし、ローデアはそれ以上の問いかけを許さなかった。

「さあ、無駄話はここまで。一気にカタをつけるよ。あたしはほころび目を通して、あいつを攻撃する。あんたはその隙に結界を修復するんだ」

「そんな無茶な」

 ヴィゼは琥珀色の目を瞠った。

「向こう側は何があるのか、どうなっているのかわからない。そんなことをして、万一、結界に影響があったらどうするんですか。ここは僕が支えます。あなたは魔法院に連絡を。魔法院になら……」

 ローデアの激しい、燃えるような怒りをはらんだまなざしに出会って、ヴィゼはつづく言葉をのみ込んだ。

「あんた、あの子の力を当てにしてるのかい。冗談じゃない。あの子は何も知らないんだ。知らないままでいいんだよ」

「ローデアさん」

「さあ、ぐだぐだ言ってないで。どうせ、あんた一人にここを支えきれはしないんだ。行くよ」

 ローデアの手のなかに、ちらちらと光が踊る。
 そして、それはやがて光の槍となる。細く長大な輝く槍。
 彼女の白い顔と紅い髪が金に染まる。

「失せなさい!」

 巨大な影に向かってそれは投じられた。