(もう少しは甘えてくれても、頼ってくれてもいいのにな、つれない婚約者殿だ)

 無意識に、かれの右手はメディアの髪をすくいあげ、指にからめ、もてあそんでいた。滅多に触らせてはもらえないが、ロランツはこの燃えるような赤い髪に触るのが妙に好きだった、

「メディア、僕では駄目かな。それは母親役は無理だけど君の寂しさを埋めたい。生涯の伴侶として」

 その言葉に、ロランツの胸に顔を埋めて顔を隠していたメディアが、ようやく顔を上げた。真っ赤に紅潮した顔をさらに赤くしながらも一心にロランツを見上げる。何かを見極めようとするかのように。

 その視線の強さにロランツは思わず問いかける。

「メディア?」

 とたん、彼女はぷいと横を向きつぶやいた。

「か、考えておく」

 すげなく拒絶されなかっただけ進歩なのだろうかと、ロランツが思ったときだった。

「殿下、こちらですか」

 ノックとともに扉が開かれる。