少なくとも、もう前ほどは嫌われてはいないと思う。

 そうでなければ、意地っ張りでも、まっすぐな気性の彼女のことだ。とっくの昔に、自分の元から去っているはずだ。

 今では、どちらかと言うと、好かれているのではないかとは思う。

 だが、それも決して確信しているわけではない。彼女の心が完全に自分の方を向いていると、断言できる自信は残念ながら今の彼にはなかった。

 いまだに彼女にとって、自分は名目だけの婚約者に過ぎないのではないのかと思うことすらある。

 こうやって、ずっと腕の中に閉じこめでもしていない限り、彼女がためらいもなく頼り、逃げ帰る先は、魔法院のあの人、メディアの魔法の師であり、育ての親に等しいラムルダである。

 師弟、親子あるいは兄妹、その全てをあわせたような、そんな強い絆が二人の間にあるのがロランツにもわかる。それには恋愛感情は含まれていないことも。

 まるで父親に嫉妬するようなものだ、馬鹿げているとは思うが、メディアはときどき今日のように寂しげな表情を見せても側にいるロランツにはけっして甘えてはこない。それがもどかしくてならない。