最初の出会いは最悪だった。

 失敗した魔術のせいで惨憺たる有様のなってしまったところを、竜退治の依頼に訪れた王子に見られ、思い切り笑われまくられた。しかも、この女性と見間違いかねないお綺麗な顔で。

 腹の立つことこの上なかった。だから、竜退治の報酬に王子妃の座などを要求してやったのだ。

 単なるいやがらせのつもりだった。別にそんなものなど欲しくはなかった。もらったって困るだけなのだ。なのに、王子はなぜか快く引き受け、それ以来、こうやってずっとからかわれまくられる日々が続いている。

 とはいえ、彼はからかいつつも基本的にはメディアに優しいし、いざとなれば己の命を賭けてでも彼女を守ってもくれたのだ。いつまでも嫌いでいることなどとても出来なかった。

 ただ、どこまで彼が本気でどこからからかっているのか、どうにもメディアにはわからないのが問題だった。そのせいで、いまだに本当の気持ちを打ち明けられずにいる。

 いや、一度は決心したのだ。

 が、何だか気づくと、いつもの彼のペースに巻き込まれ、言いそびれてしまった。

 それに告白したとたんに彼に笑われまくられた挙げ句に、いつのまにか心地よくなってきたこの関係が終わってしまいそうで怖くもあった。