雷を落とすとは、比喩でも何でもないのが、このメディアの怖いところである。外見はごく平凡な女の子に見えても、メディアは竜退治の魔女。王城ごと破壊する雷を喚ぶくらい、朝飯前である。

 しかし、当のロランツは彼女を手放す素振りを見せるどころか、あっさりと拒否して見せた。

「いやだよ。それに、この方が安全だろう」

「うー」

 歯がみをするメディア。確かに彼に言うとおりだった。
 メディアの力は強大でも、その分、制御が甘い。ここまでくっつかれてはロランツだけをねらい打ちすることなど、とてもできはしない。自分まで巻きこまれてしまうのがオチだった。

 しかし、実は問題はそんなことではなかった。メディアにはこの王子の髪の毛一筋とて傷つける気などさらさらなかったことだ。