「ねぇ、香織。僕がコンタクトに変えた事みんな驚いてたね。」

僕の右腕を枕にして桜に見惚れている香織に視線を向けてポツリと呟く。
予想通りだったとはいえ、あの反応はやはり失望もあった。
今まで見向きもしなかった女の子が、僕の机の周りに休み時間の度にやってきて話し掛けてくる
『廉君ってかっこよかったのね。どうして今まであんな眼鏡をしていたの?』

上辺しか見ないそんな反応がイヤだったからだよ。そうはっきり言ってやりたかった位だった。


「廉君凄い人気だったね。」

クスッと笑い一瞬だけ僕を見るとすぐに視線を逸らしてしまう香織に何だか二人の心が距離を置いたような気がして急激に不安になる。
その不安を拭いたくて身を起すと香織を組み伏せるようにして瞳を覗きこんだ。

「香織…どうしたの?」

僕の突然の行動に驚き大きく見開かれたその瞳は僅かに潤み不安げに揺れている。

「何でもない…」

「何でもないこと無いだろう?…もしかして君は僕が変わった事を良く思っていないの?」

「――っ!そんなこと…」

彼女の一瞬の動揺にその答えを見つけた僕は大きくひとつ溜息をついた。

「…そうなの?」

「…ごめ…あたし…嫌なコなの…見ないで…。」

身体を捩って僕の視線から逃げるように顔を隠し、腕の中から逃げようとする香織を強く抱きしめた。