先ほどまで見ていた桜と同じ筈なのに見る角度が変わるとこんなにも違って見えるんだろうか。

桜の花の薄いピンクと柔らかな新芽の黄緑色の葉が目に鮮やかで、その隙間からキラキラと零れ落ちる木漏れ日が風に煽られ散ってくる桜の花びらに反射して、太陽のカケラが落ちてくるように見える。

「すっごい綺麗…。」

「だろ?去年もさ、ここでこうしてずっと桜が散っていくのを見ていたんだ。」

「桜…好きなの?」

「日本人なら誰でも好きなんじゃない?桜ってさ、咲くまでが凄く楽しみで、咲いたら今度は満開になるのが楽しみで、散っていくのが惜しいんだけど、その花吹雪がまた楽しみで…なんだか心が花から離れたくないって言っているみたいじゃないか?」

「あぁ…そういわれればそうね。」

いつの間にかあたしは廉君の腕枕で同じように寝そべって桜を見上げていた。

同じ光景を同じ視点で見つめていることがなんだかくすぐったくて…。

だけど、今までよりずっとずっと廉君が身近に感じられて幸せだった。

『心が花から離れたくないって言っているみたいじゃないか?』

まるであたしの気持ちそのものの言葉のようでドキドキと胸が高鳴って、廉君に聞こえてしまいそうだったけれど…

それでもあたしの心はこの腕の中から離れたくなかった。