担任はそう言って、美少女一兎南を空いている席に座るよう促した。


そこは、ちょうど俺の隣。

兎南は迷うことなくその席に座ると、俺に向かってまたニコリと笑った。



「兎南です。よろしく」


「あ、ども。狗柳蒼デス」


あまりの美少女具合にドギマギしながら俺は答えた。

美人は声まで美人なんだなとか、おかしなことを考えてしまう。



「兎南さん!俺は安堂一樹【あんどういつき】!分からないことあったら、何でも聞いてね!!」


「安堂君?ありがとう」



下心丸出しの安堂の台詞にも、兎南はにこやかに答える。


まったく安堂の奴、本当に見境ねぇな。


俺は呆れたようにため息をついた。


それから何となく隣に目をやると、兎南と目が合って、何故だか不思議な気分になった。


美人で、性格も良さそうで。


けど、その碧の目の奥には何か陰りのようなものがある気がして。


俺は、知らず目線を反らした。