知らなかった僕の顔

玄関のドアを開けると、矢島さんがにこやかに立っていた。

僕は、一瞬ドキリとする。
存在を忘れかけていたからだ。


「ごめん、宮田くん。ちょっと醤油貸してくれる?」
ぴったりとした白のランニング姿の矢島さんが言った。

「…醤油…ですか?」

「ある?醤油」

「はい…今、持ってきます」


近所付き合いとは、こういうものなのだろうか?

出会って二度目で醤油を借りていいものなのか?