知らなかった僕の顔

森若ちゃんは、僕の少し前を歩いている。

暗い浜辺では、月明かりだけが頼りだった。


僕は、彼女の小さな後ろ姿を見る。

波打ち際すれすれを歩く、その細い足首を見る。

砂に足をとられ、うまくは歩けない足元を見る。


「ちょっと座らない?」
波音に消されないように、僕は少し大きな声で森若ちゃんに言った。


「そうだね」
振り向いた彼女は笑っていた。