知らなかった僕の顔

あれほど混んでいた店内には、いつの間にか空席が目立っていた。


ピアノのBGMが静かに流れていたことに、僕は今更ながら気づく。


とうに食事を終えていた僕らは、目を見合わせて頷いた。


会計は僕が持った。

森若ちゃんは、「絶対に割り勘で」と、なかなか譲らなかったけど、最後には根負けして「ごめんね。ご馳走になるね」と、申し訳なさそうに言った。


楽しい時間をくれた彼女に、もっとお返しがしたかった。