知らなかった僕の顔

「その矢島さんて、おじさん?」
森若ちゃんが、ヒントを得ようとする推理探偵のごとき険しい顔で聞いた。

「いや、若いよ。二十五か六くらいに見えたけど」

「ふーむ…」
そう言ったきり、森若ちゃんは考え込んでいる。


「でも、まあ、もう少し様子を見てみるよ。僕の誤解かもしれないし」
僕は、無理に明るくそう言った。


森若ちゃんとの楽しい時間を矢島さんに費やしてる場合ではない。


「宮田くん、もし何か危険を感じたら、すぐに私か警察に電話してね」
警察と自分を同じ位置に置く森若ちゃん。


「うん、わかった。森若ちゃんに話して、なんか気がラクになったよ」
笑いながらそう答えると、本当にラクになった気がした。