知らなかった僕の顔

どうでもいい長谷川のことなどをとりとめもなく考えていると、背後からパタパタと駆けてくるサンダルの音が聞こえてきた。


振り向いて見ると、明美さんが小走りに胸を揺らして、僕のいる場所へと向かってきた。


「ごめんねぇ」

いきなり謝る明美さんに驚いて「何がですか?」と聞いた。

「宮田くんに、こんなキツイ仕事させちゃったから」

「あ、全然ですよ。もうすぐ終わるんで」
僕は、笑顔で答える。

「でも本当に助かるわぁ。流石は男の子よね」
明美さんは、くねくねと体を揺らしながら、僕の肩を手で軽く触った。

「いや、あの、なんでも言ってください」
触れられた肩が熱くなっていく気がした。

明美さんは「んふふ」と意味ありげな含み笑いをして、その場を離れかけた。

「あっ、そうだ」
明美さんは、離れかけた位置よりさらに僕に近づいた。


僕の手は、あっという間に明美さんの柔らかい手に包まれていた。