知らなかった僕の顔

阿部ちゃんは、黙ったまま煙草をふかした。


僕は、おかしな空気になってしまった原因の答えを探す。


唐突に阿部ちゃんは言った。

「人妻はダメだよ」
煙草の火を乱暴に灰皿へ押し付ける。

意味がわからない僕は、ポカンとその様子を見ていた。


「明美さんでしょ?」
あきれたように阿部ちゃんが言う。

「は?明美さん?」

「好きなんでしょ?」

「僕が?明美さんを?」

「え……違うの?」

阿部ちゃんの検討外れな答えに、僕は笑った。