知らなかった僕の顔

「…いないよ」

「誰か紹介してあげよっか?」

「いや、遠慮しとく」

「なぁんだ、好きな人いるんだ」

「な、何で?」

「女の子紹介してやるって言われて即座に断わる男は、すごく大事にしたい人がいるか、重い病気の奴しかいないよ」
阿部ちゃんは、煙草の煙を吐きながら言った。

「…なるほどな」


すごく大事にしたい人かどうかは、まだわからない。

だけどずっと僕は、森若ちゃんからの電話を待っていた。