知らなかった僕の顔

「あー、そっか、わかった。甘いものが好きだから、ここでバイトしようと思ったんだ?」

「んー…甘いものが好き…ていうより、家が近いからだね。確かに甘いものは好きだけど」
「甘いものが好き」と連呼するうちに、その意味が一瞬もやもやとした曖昧な感情を引き起こした。

甘い罠、甘い囁き、甘い口づけ、甘い誘惑…。

微妙な体温の上昇を感じた僕は「空気入れ換えていい?」と言って、休憩室の小窓を開けた。

日当たりの悪い薄暗い休憩室に、爽やかな風が舞い込む。