カジュアルロンド

カナに誰に似ている?と聞かれ、織田裕二と言ってしまい後悔していた。
少し見栄を張りすぎた。
よく見ると鏡の中の僕はそんなにイケテない。

第一印象は大事だ。

次ぎの日、散髪屋に行き、主人に「織田風に」と頼んだ。
だが出来上がりはふかわりょう風味。
まぁ、仕方ない。
髪はとりあえずムースで整えればいい。 

ユニクロで新しいジーンズを買い、カナが煙草の匂いが嫌いかもしれないので念のために消臭剤も買った。
仕上げは、本屋で東京のデートMAPが載っている本を買い、レジャー施設を要チェック。 

夜、ベッドの上で、最後の仕上げとなる手の爪を切りだした。

パチンパチン。
爪を切る音が鳴り響く。

カナとリアルで会いたいと思っていたけど、それが現実になるなんて、夢を見ているようだ。
本当に明日が待ち遠しい。

しかし明日はデートと呼べるものだろうか?

カナはただ詩集の暗号に好奇心があるだけだろう?  

僕は爪を切り終わると、ベランダに出た。

煙草を吸いながら、空に輝く十六夜月を眺める。 

過度の期待はたいがい裏切られる。
あまり期待しないでおこう。