カジュアルロンド

「一緒に行ってみようよ?」
僕は驚いて聞き返した。

――それって実際にカナと会うことじゃないか

「うん。明日は友達と映画に行く予定だけど、明後日は空いている。どう?」
カナが言った
「大丈夫さ。行けるよ」
僕は急いで答えた。

なんだか急な展開に眩暈がしてきた。
胸の鼓動が激しくなる。
カナはよほど詩集の暗号が気になったのだろう。
それもそうだ。
古本屋で見つけたゲーテの詩集に『私をさがして』と赤線がひかれているのだから。
僕はただの悪戯じゃないかと思うけど、カナは何かあると、興味津々だ。

明後日、僕らは新宿駅の花屋の前で待ち合わせることになった。

カナとリアル初デート!
思わず片手でガッツポース。
ゲーテの詩集に心の中で感謝した。

「待ち合わせどうしようか?携帯のメールアドレスでも交換しておく?」
カナが言った。
「携帯いいの?」
僕はきいた。
「うん。顔を知らないし」
「番号も交換しておく?」
僕が問うと、
「それは恥ずかしいから会ってからにする」
とカナは答えた。

携帯のアドレスを交換し終えると、
「ゲーテの詩集を忘れずに持ってきてね」
カナは嬉そうに言った。