カジュアルロンド

頭の中のモヤモヤを吹き飛ばし、ベッドの中で詩集を読み始めた。

ドイツの文豪ゲーテ。
『若きウエルテルの悩み』『ファウスト』などの名前は受験で覚えたが、読んだことはない。
カナに会った時、この詩が良かったよ、この詩がいいねと話題にできるように集中して読み進めた。

すると、詩の一部分に赤線が引かれているのに気がついた。
たとえば『と』とか『こ』とか。
そして所々のページ番号にも赤線が。
最初は、元の持ち主が書いたのだろうと気にしていなかったが、『私を探して』という文字に行き当たり読む手を止めた。

ページを前にペラペラと捲る。

赤線を辿ると最初に引かれた文字は『と』。
次は『う』。
そして、最後に『私を探して』と散発的にいくつものフレーズに赤線が引かれてある。

僕はゆっくりと声に出してみて、ハッと気がついた。
慌ててノートにその文字を書き繋げると奇妙なことにある住所が出現した。

『東京都○○市××コーポ光　２０３号室　私を探して』

好奇心からネットで住所を検索してみた。
すると確かにその場所は存在しているようだ。