「私は、天に還る。そして新しい人生を生き直すわ。だから、紘乃ももう過去に……私に縛られないで、自分の人生を精一杯生きて」
その言葉に、紘乃は今まで押し殺してきた後悔と罪の意識をはき出すように声を上げて泣き出した。
キズナは、そんな紘乃に触れようとしたが、思いとどまったように手を止めた。
――死んだ人間は、生きている人間に触れられない。
そう思ったとき、キズナは後ろからツキが体の中に入ってくるのを感じた。
そして次の瞬間、キズナは肉体を得ていた。ツキが力を貸してくれたのだ。
キズナはツキに対する感謝の気持ちで心を埋めながら、座り込んでいる紘乃に手を伸ばした。
「ここから、二人で踏み出そう」
紘乃はしばらく呆然とキズナを見つめていたが、ようやく涙を拭いながら頷き、キズナの手を握って立ち上がった。
「紘乃の手は……いつも温かいね」
握り合う手を見つめながらキズナが呟いた。幼い頃から幾度となく繋いだ手。自然と懐かしさがよみがえる。
そして、これが親友の温もりを感じられる最後の瞬間。
空では、取り戻した友情を祝福するかのように、赤い夕日が二人を照らし輝かせている。
二人はしっかり握手した後、ゆっくりと手を離した。
「……さよなら、紘乃」
キズナがそう言い、空に向かおうとしたとき、紘乃がためらいがちに小さい声を出した。
「……ねぇ、私にとって絆はかけがえのない親友だった。遠い昔も、この2年半も。絆にとっても、私は親友だった……そう思ってもいいかな?」
おずおずとそう言う紘乃に向かって、キズナが訂正した。
「"親友だった"じゃない。親友よ。これからも、ずっと」
キズナは微笑みながらそう言うと、いつの間にか隣に現れたツキと共に、空に向かって飛んでいった。一度も振り返ることなく。
紘乃は涙を流しながらその後ろ姿を見送っていた。やがてキズナが完全に見えなくなると、目を拭いながら振り返り、しっかりと前を向いて歩き出す。
二人は二年半という長い時を越え、ようやく顔を上げてそれぞれの道を進み出したのだ。
新しい明日に向かって。

